よくあるご質問 - ガスケットに関するご質問
Q1 ガスケットの締付力の最小値はどのように計算すれば良いでしょうか?
JIS B 8265:2010(圧力容器の構造─ 一般事項)」などに規定されている Wm1,Wm2と、ニチアスで設定したWm3を以下の式に従い計算します。Wm1,Wm2,Wm3のうち、一番大きい数値がガスケットの締付力の最小値です。
● Wm1 とは、使用状態での必要ボルト荷重[N]のことです。
● Wm2 とは、ガスケット締付時の必要ボルト荷重[N]のことです。
●Wm1,Wm2 は流体の種類(気体,液体)によらず計算されるため、これらの数値では締付力が不足する場合があります。
それを補うためにニチアスで設定した最小ボルト荷重[N]がWm3です。
※ 出展:JIS B 8265:2010(圧力容器の構造-一般事項) 付属書G 圧力容器のボルト締めフランジ
※ 関連FAQ「ガスケット座の有効幅とガスケット反力円の直径とは何ですか?」
★ ガスケットNAVIには必要な締付力・締付トルクを簡単に計算できるコンテンツがあります。
「締付力計算」も併せてご利用ください。
Q2 ガスケットの締付トルクの最小値はどのように計算すれば良いでしょうか?
JIS B 1083:2008 (ねじの締付け通則)や機械工学便覧などに出展されている以下の式で計算されます。
※ねじ面の摩擦係数(μth)およびナット座面の摩擦係数(μw)が0.15のときにK≒0.20 となります。
μthおよびμwは、普通の表面状態をもつ鋼製のボルト・ナットの表面に潤滑油を塗布して用いる場合に、0.15程度とみなされます。
★ 関連FAQ「ガスケットの締付力の最小値はどのように計算すれば良いですか?」
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「締付力計算」も併せてご利用ください。
Q3 ガスケット座の有効幅とガスケット反力円の直径とは何でしょうか?
ガスケット座の有効幅とは「実際にシールしている部分のガスケット幅」で、ガスケット反力円の直径とは「内圧がフランジを押し広げようと作用する面の外径」のことです。
フランジは、ボルトの締め付けや内圧の作用により、若干のたわみ(フランジローテーション)が生じ、凸状に膨らんだ形をしていると考えられています。
このことを考慮したものが、ガスケット座の有効幅、ガスケット反力円の直径です。
ガスケット座の有効径、ガスケット反力円の直径の求め方
ガスケット座の基本幅(b0)を目安に求めます。
b0は座面の形状によって異なりますが、一般的に、b = ガスケット接触幅の1/2とされています。
JIS B 8265:2010 (圧力容器の構造-一般事項) 表G.3をご参照ください
● ガスケット座の有効幅(b)
b0≦6.35mmのとき b=b0
b0>6.35mmのとき b=2.52√b0
● ガスケット反力円の直径(G)
b0≦6.35mmのとき G = ガスケット面中心円の直径
b0>6.35mmのとき G = (ガスケット接触面の外径)-2b
(ただしラップジョイント形フランジは除く)
★ 出展:JIS B 8265:2010(圧力容器の構造-一般事項) 付属書G 圧力容器のボルト締めフランジ
★ 関連FAQ「ガスケットの締付力の最小値はどのように計算すれば良いですか?」
Q4 「ガス系流体」と「水・油系流体」では、なぜガス系流体の方が高い締付面圧が必要なのでしょうか?
ガスはガスケット内部の隙間を通り抜けやすいため、ガスケットをより強い力で締め付け、内部を密にする必要があるからです。
ジョイントシートや膨張黒鉛ガスケットなど、内部に空隙が多い構造をしているガスケットは、浸透漏れを防ぐためにガスケットを締め付けて内部を密にする必要があります。内部を密にすることで、流体が通る隙間を無くしてしまうのです。 ここで、ガス系流体は水・油系流体に比べて分子量が小さく、粘性も低いため、水・油系流体に比べて強い力で締め付けて、内部をより密にする必要があります。そのため、より高い締付面圧が必要になります。
Q5 一度使用したガスケットの再利用は可能でしょうか?
一度使用したガスケットは、使用期間、種類に関わらず再使用は推奨しません。
フランジは一見平滑に見えても、ミクロで見ると微小な凹凸があります。
ガスケットは一般的にフランジよりも柔らかいため、フランジに締め付けると、フランジ面に追従してガスケットが変形します。
こうしてフランジ面と馴染むことにより接面漏れを防いでいるのですが、一度締め付けたガスケットはフランジ面に合わせて塑性変形しており、開放しても完全には元の形状にもどりません。
この変形したガスケットを再度使用すると、フランジとガスケットの間に微小隙間が生じ、この隙間が漏れに繋がる可能性があります。そのため、ガスケットの再使用はお勧めいたしません。
Q6 ガスケットペーストは何を使用すれば良いでしょうか?
ジョイントシートには、TOMBO No. 9105(アクアタイトペースト)、TOMBO No. 9106(オイルタイトペースト)、TOMBO No. 9400(ナフロンペースト)のいずれかのご使用をお勧めいたします。うず巻形ガスケットは、特にペーストの使用は必要ありません。
製品カテゴリ | ガスケット (TOMBO No.) |
ガス | 液体 | 適用ペースト (TOMBO No.) |
---|---|---|---|---|
ジョイントシート | 1120 1995 |
◎ | × | 9105 9106 9400 |
ふっ素樹脂ガスケット | 9007-SC 9007-LC 1133 |
◎ | × | 9400 |
膨張黒鉛ガスケット | 1200シリーズ | △ | △ | - |
うず巻形ガスケット | 1834R-GRシリーズ | × | × | - |
1834R-NAシリーズ | × | × | - |
◎・・・使用を推奨します。
△・・・高度なガスシール性が要求される場合には、TOMBO No.1215-Tをご使用ください。
×・・・ペーストを使用する必要がありません(使用することは可能)。
<ペースト選定にあたってのご注意事項>
ジョイントシートに溶剤系のペーストを併用すると、溶剤でジョイントシートのゴムが膨潤して強度が低下し、締付時に圧縮破壊が生じることがあります。
また、シリコーン系のペーストは、ペーストの中でもとくにジョイントシートとフランジの滑りを助長しやすいので、使用しないでください。
膨張黒鉛を使用したガスケットで、高温条件においてネバーシーズなど金属を含むペーストを使用すると、ペースト成分の触媒作用により、膨張黒鉛が酸化消失する場合があります。ご使用の際には別途ご相談ください。
<気密試験を行う場合>
ジョイントシートやふっ素樹脂ガスケットで、流体が液体でも気密試験を行う場合はペーストを使用することをお勧めいたします。
Q7 シートガスケットの締付量を締代で管理したいのですが、可能でしょうか?
シートガスケットに必要な圧縮量を実際のフランジで管理することは難しいため、締代管理は推奨いたしません。
シートガスケットの代表としてジョイントシートを例として考えます。
ジョイントシートの圧縮量は、適正な締付面圧で約10%なので、呼び厚さが1.5mmの場合は、必要な圧縮量は0.15mmとなります。
実際のフランジでは、フランジのたわみや面間のズレなどがあるため、この様なシビアな管理は困難です。そのため締代管理ではなく、トルク管理をお勧めしています。
※シートガスケット以外(うず巻形ガスケット等)については、シートガスケットよりも締代が大きいため、締代管理を行っている場合があります。
Q8 真空(負圧)とは何ですか?
JIS Z 8126:1999(真空技術-用語-)では、「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」と定義され、以下のように区分されています。
圧力の表現には、大気圧(1気圧)をゼロ点としたゲージ圧と、絶対真空をゼロ点とした絶対圧の二つがあります。
一般的に、配管や機器などで正圧(加圧)で使われる圧力は、ゲージ圧(単位の後に G と記す)で表現され、真空機器など負圧(減圧)で使われる圧力は、絶対圧(単位の後に a またはabs と記す)で表現されます※。また、単位は[Pa]のほかに[mmHg][Torr]もよく用いられます。
※ただし、負圧でもゲージ圧で表現されることもあります。
Q9 負圧用途では、どのようなガスケットを使用すればいいでしょうか?
プラントの負圧ラインで見られるF.V.(フルバキューム)の条件ではシートガスケットやうず巻形ガスケットが、真空機器ではゴムOリングや中空メタルOリングが使用されます。
●F.V.(フルバキューム)
圧力の条件としては、差圧0.1MPa 以下の空気(大気)をシールすることが出来れば良いので、加圧条件で使われるガスケットの選定と同様に『内部流体への耐食性、耐熱性、応力緩和特性』に加え、『空気のシール性』に優れたガスケットを選定します。
石油学会規格JPI-7S-81:2005「配管用ガスケットの基準」で選定されるガスケットは、0.7kPa abs の低真空まで適用範囲とされています。
●真空機器
高い真空度が求められるため、ゴム O リング(TOMBO No.2670)や中空メタル Oリング(TOMBO No.9200 シリーズ)などが使用されます。
真空度を高める場合に、ゴム O リングはガスの透過などが影響し、中空メタルO リングはフランジやガスケットの面粗さが影響してきます。
また、穴あき型中空メタル O リング(TOMBO No.9200V)を使用する場合、真空用途では穴を外径側に開ける必要があります。
負圧用途で使用されるガスケットの使用例
Q10 負圧用途では、どのようなことに注意すべきでしょうか?
負圧によるフランジ内部への引き込まれや、ガスケット内部への空気の浸透に注意が必要です。
● ゴムシートガスケット
フランジ内部にガスケットが引き込まれやすいので、フランジが平面座(レイズドフェイス、RF)の場合でも、ガスケットの形状を全面座(フルフェイス、FF)形にするなどの対策が必要です。
●PTFE被覆ガスケット
外皮が滑りやすく構造的にも引き込まれやすいため、外皮も全面座形状にしたり、外周を溶着するまたは縫製するなどの対策が必要です。
●ジョイントシートガスケットや膨張黒鉛ガスケット
空気がガスケット内部へ浸透しやすいため、ペーストなどの補助材や、浸透を抑制するような処理が必要な場合があります。
●ふっ素樹脂ガスケット
特別な対策は必要ありませんが、純PTFE ガスケットはクリープ変形量が多いため、タング&グルーブ(T&G)座で使うのが適切です。
Q11 最小締付トルクの何倍のトルクで締付けたら良いでしょうか?
一般的には最小締付トルクの1.2倍~1.5倍のトルクが推奨されています。
最小締付トルクとは、漏れが発生しないために「最低限必要な」締付トルクのことです。
しかし、実際の締め付けでは完全に、均一にトルクをかけることは難しいため、最小締付トルクに安全率を乗じたトルクで締付けることが推奨されています。
この安全率の考え方は使用環境により様々ですが、一般的には
・シートガスケット(ジョイントシートなど)で1.2倍
・セミメタルガスケット(うず巻き形ガスケットなど)で1.3倍~1.5倍
といわれています。
これを、推奨締付トルクと称することがあります。
※ただし、許容締付トルクを超えないようにご注意ください。
※締付力に対してのボルト強度有無は、各自にてご判断ください。
ガスケットNAVIの「締付力計算」というコンテンツで、ボルトの材質を選択すれば、計算結果にボルトの設計応力値やボルトの規定最小降伏点も表示させることができます。ぜひ、ご利用ください。